BREXITとエストニア イギリスEU離脱のエストニアに与える影響

イギリスで国民投票の結果、まさかのEU離脱派が勝ち、イギリスがEUを離脱することになりました。

エストニアから遠いようで近いイギリス。このイギリスのEU離脱(BREXIT)が、エストニアに住むことにどのような影響を与えうるでしょうか。

対露安全保障への影響

エストニアとロシアの関係は、エストニアがソ連から独立を果たした後も長らく緊張状態が続いています。小国であるエストニアはNATOと協力した安全保障体制の構築を行っていますが、イギリスの離脱は、この安全保障体制に影響を与えることが懸念されています。

ご存知の方も多いと思いますが、1940年、エストニアはソ連に侵攻されました。占領後、エストニアでは指導者、軍人は処刑、強制連行されて亡くなり、多くのエストニアの一般市民も強制労働により命を失っています。第二次世界大戦後の1991年には、エストニアは独立を果たしますが、その後も多くのロシア系住民はエストニアにとどまりました。

近年もロシア系住民との関係は必ずしも完全に良好とはいえず、市街地の旧ソビエト軍兵士像の撤去をめぐってロシア系住民と警察の衝突で死者が出たり、エストニア語の公立学校(一部はロシア語で授業が行われています)での必須科目化をめぐってロシア系の教師と政府との対立等がみられていました。

そして2007年には、エストニアはロシア系ハッカーによると思われるサイバーテロにみまわれてます。この事件は、前述の旧ソビエト軍兵士像の撤去に伴って発生した暴動の後におきました。このサイバーテロにより、ほとんどの国民が利用しているインターネットバンキングがクラッシュし、買い物ができなくなる事態になり、緊急医療にも一部影響が出たそうです。世界でも初めてといっていい大規模なサイバーテロは、遠く離れた日本でも報道されたくらい衝撃的な出来事でした。

ロシア政府は関与を否定しましたが犯人探しへの協力も得られず、加えて領空侵犯等も繰り返されたとのことで、現在も対露の国防をどうするかはエストニアにとって大きな課題です。

エストニアの国防はエストニア人男子の徴兵制による国防軍が担っていますが、小さな国であるがゆえに軍の規模も小さくNATOやEU加盟国との協力が重要視されています。今回のイギリスのEU離脱はこの防衛機能にマイナスの影響を与えることが懸念されています。

昨年のウクライナ危機以来、NATOとロシアの対立は緊張感のあるものになっていますから、ヨーロッパ諸国の足並みが乱れること、あるいは乱れているとロシアにとられることは、エストニアにとって好ましいことではないです。

エストニアのロイバス首相は、今年4月にも東京で日経新聞のインタビューに対し、ロシア国境に配置されているNATO軍強化に言及していますが、引き続きエストニアを含むバルト3国において「加盟国一国への攻撃(サイバーアタックを含む)はNATO全体への攻撃とみなす」姿勢、そして軍事面でのイギリスとの連携が継続していることのアピールが、行われていくことになるでしょう。

今月8日にはNATO首脳会議でバルト3国とポーランドに4000人の多国籍部隊派遣が決定しています。

現在のエストニア滞在に直接的な影響はありませんが、長期的に住むことを考えると、このEUが揺らぐ中でエストニアの対露国防がどのように展開されていくかは非常に重要な問題といえます。

他のEU諸国に離脱ムードが広まる可能性

イギリスはもともと難民・移民の受け入れ等について反発が非常に強かったことが、今回の離脱の一因と言われていますが、この傾向はもちろんイギリスだけではありません。フランスやドイツ、スペイン等他のEU加盟国でも同じ意見を持っている人たちの声は年々強くなっています。

エストニアは現在のところ移民が比較的少ないこともあり(EU以外の国からの移民の割合を制限していること、エストニア語の話者が少ないこと、単純労働の賃金が低いことなどが原因)、このような傾向は他の国ほどは顕著ではありません。

しかし、フランスやイタリア等他のEU加盟国において、今回のイギリスの離脱をきっかけにイギリスと同じように離脱をしたいという声がより強くなり、EUを抜ける国が続くかもしれません。

このようにEU離脱国が増えれば、エストニアでビジネス等を考えている人にとっての「エストニアがEU加盟国である=巨大な単一市場を個別の規制や関税などを考えずに相手にできる」というメリットが薄れていくことにもなります。

ヨーロッパ諸国におけるヘイトクライム増加の可能性

イギリスではBREXIT後に、ヘイトクライムが5倍に増加したとの報道がありました。理由として、イギリスがEU離脱を選択したことが、イギリス国内における外国人排斥的な行為を正当化できるような出来事だと捉えられたのではないかとも言われています。

日本人を含むアジア系は、服装が明らかに異なるイスラム系と比べると比較的ヘイトクライムの対象になることは少ないかもしれませんが、現在でもヨーロッパでアジア系が暴力の対象になった、暴言をはかれた等の事件はゼロではありません。私自身も、イギリス、フランス、ドイツなどで、暴言まではいかないものの不快な思いをしたことは何度もあります(幸いエストニアでは今のところ一度もありませんが・・・)。

現段階では、イギリス以外の国でEU離脱後のヘイトクライムの増加があったという報道はないものの、今後EU離脱の動きが他のヨーロッパ諸国に波及した場合、外国人・外国語を話す人に対する風当たりが強くなる可能性があるかもしれません。

実際はEU離脱をしたところで、ヨーロッパ内の人の移動が制限されるだけなので、アジア系の移民の流入にはさほど関係はないはずなのですが、ヘイトクライムをするような人はそのあたりたいして考えていないでしょうからね・・・。

 

個人的には他の国にこの離脱の動きが波及しないことを祈っていますが、EUのこれからについては、今後の他のヨーロッパ諸国の選挙の経過なども注目して見ていく必要がありそうです。

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