エストニアの総合大学タリン大学 英語での大学留学の新しい選択肢

前回、海外の大学に留学して英語で何か学びたい人にとって、学費・生活費が安いエストニアはけっこう穴場なのではというポストを書きました(こちら)。

今回、実際にキャンパスツアーに同行する機会があったのはタリン大学、ユーロアカデミーのふたつ。

まずはタリン大学についてご紹介します。

エストニアの公立大学「タリン大学」概要

大学の公式サイト(こちら)によると、タリン大学はエストニアの公立大学で3番目に大きく、最大の人文科学系の大学です。

全学生数が9000人以上、そのうち5.5%が留学生ということなので、500人前後の留学生が学んでいるということになりますね。アジア系の学生はあまり見かけませんが、日本人の学生さんも数人いるようです。エストニアはEU加盟国ですので、エラスムスプログラム(EU国間の学生交流を促進する制度)で他のヨーロッパ諸国から1年間の交換留学で来ている学生さんも多そうです。

うちの夫もエラスムスでフランス→スペインに留学していましたが、このような機会があるのもヨーロッパの人が基本3~4か国語話せることが多い理由の一つかもしれません。

設立は2005年ということで比較的新しい大学ではありますが、現在のキャンパスの一部は1900年代半ばにすでに建設されており、プログラミングが教えられ始めていたようです。

大学の学部は大きく分けて、ヴィジュアルメディア系、法学、リベラルアーツ、社会科学、政治学と人文科学系の学部のみですが、大学院になるとデジタルテクノロジーや物理学、生活と予防医学のような多様な専門コース(研究室)があります。学部にリベラルアーツがあるので、幅広い分野の講師がいるんでしょうね。コースの多くは英語でも授業が行われています。入学に必要な英語レベルは英語圏とほぼ変わりないか、ほんの少し低めな印象です。

研究者や職員の10%弱は他の国出身者で、タリンに最近来たというイタリア人は、タリン大学の物理学の研究室に数年勤める予定だと言っていました。

留学生の数がまだまだ少ないためか、留学生サポートはそれほどないようではありましたが、学生による留学生支援組織はあるようで、今回見学した際に案内してくれたエストニア人の学生さんもそこに所属しているとのことでした。この組織は語学カフェ等の運営もしているようです。

留学生のための入学準備コースはないようですね。寮は留学生も利用可能とのことで、シェアルームであれば1か月100ユーロ前後と格安です。

学費ですが、公立大学なので、現地学生は学費無料です。留学生の場合、3000~5000€/年の学費がかかります。

タリン大学のキャンパスと設備

タリン大学のメインキャンパスは大通り沿いの入り口だけ見ると、なんだか古めかしくて小さなキャンパスっぽいのですが、実は中に入ってみると奥に広々としている作りになっています。バリアフリーにも配慮されていました。

上の写真のように6つのビルが連結した作りになっていて、それぞれの建物に名前が付けられています。実際の雰囲気はヴァーチャルツアー(こちら)を見てみてください。春に行われるオープンキャンパスに参加するか、もしくは事前にアポを取って訪問すれば学生サポートの人が内部を案内(英語)してくれます。

この下の写真は映像メディア関係のコースが行われるNOVAビルディングですが、新しくておしゃれな建物ですね~。

こちらはメイン玄関となるASTRAビルディングのエントランスです。この建物も新しめ。

カフェも数か所にあり、学生価格なのか市内より若干安い価格設定になっていました。シドニーで大学院行ってた時も思ったのですが、タリンもシドニーも大学のカフェが普通におしゃれな感じなんですよね。

私が行ってた日本の大学はもっと「THE学食」って感じでしたねー。もっとも夫いわく、フランスとスペインの大学のカフェも地味だったらしいので、ヨーロッパが全てこんな感じなわけではないようです。

ライブラリーも広々として、混みあっておらずいい感じでした。テスト前はいっぱいになるそうですが。

なお、海外の大学は入学は比較的簡単で、入ってからの勉強がかなり大変なことが多いので、学期末は深夜まで勉強することになる学生がたくさんいます。そのため、オーストラリアの大学はライブラリーが深夜のみIDが必要になるものの、24時間使用可能でしたが、タリン大学のライブラリーは残念ながら24時間オープンはしていないそうです。

私と夫のタリン大学に対する個人的な感想

私が入学希望の学生さんとタリン大学を訪問した少し後に、うちの夫も用事があってタリン大学のキャンパスに立ち寄ったのですが、日本とオーストラリアで学校に行った私と、フランスとスペインで学校に行った夫の抱いたタリン大学の感想を以下に箇条書きしてみます。

・建物や設備が綺麗で新しい

エストニアの大学は、いわゆる海外の大学からイメージするような広大なキャンパスと芝生、観光名所にもなるような建物ではありません。世界には世界遺産か?というような大学もけっこうありますからね(こちらを見てみて下さい)

例えば、当時の私のしょぼいスマホで撮影したオーストラリアの大学のキャンパス。画素は荒いですが、クラシックな美しさがあります。

一方、タリン大学をはじめとしたエストニアの大学はこのようなハリーポッターっぽさはありませんが、全体的に建物が新しくて綺麗です。新しいといっても、無機質な感じはなく、開放的ですっきりした明るい印象の内装でした。機能美といった感じですね。古い建物は外観は美しくても、中が寒かったり段差が多かったり、扉が重かったりと使いづらさがありますから、そのあたりタリン大学は勉強しやすそうだなと思いました。

・アジア人学生の急激な増加が起きていない

これはオーストラリアやフランス(他の国でも)で顕著なのですが、アジア圏はもともと人口が多いこと、特に中国やインドでは欧米の学位が一種のステータスになること、フランスの場合は公立校の場合学費が無料であること等を理由として、急激なアジア系留学生の増加がみられています。しかし、エストニアの場合、まだその状態になっていません。

アジア系学生の特にインドや中国のような人口が非常に多い国から、奨学金などを獲得してきている学生は、まさに「選ばれし」学生なので非常に優秀であり、またオセアニアの場合は留学生の払う高額な学費で大学の運営が支えられている部分もあるので、国家としては積極的に誘致しているところもあるようですが、あまりの急激な増え方に加え、多少人種差別的な動機もおそらくあり、地元の学生や教員はかなりネガティブな感情を抱いていることも多いです。

もちろん理由として、語学が拙すぎてグループワークが行いづらい、学位が欲しいだけの留学生に勉強の意欲があまりなく試験や課題での不正行為が頻発している等、マイナスイメージをもたらす留学生側の原因もあるのですが。

結果として、オーストラリアでは殺人事件に発展するほどのインド人襲撃事件が相次ぎ、私が在学していた際も、特にアジア圏の留学生に対して、あからさまに一緒に勉強することに不快を示す教員・現地学生は少なくありませんでした。フランスでも中国人学生に対する嫌がらせは少なくないそうです。

この点、エストニアは実際通ってないので何とも言えませんが、特定の人種の急増という事態になっていないので、差別を受けることは少ないかもしれません。

・メディア学部の設備が目を引く

上の写真でもメディア関連のコースが行われる建物がとても新しいのがわかりますが、内部の設備も映像作品を実際に作れるスタジオ等、かなり充実しています。

エストニア映画というのは私も見たことがないのですが、実は日本でもそのいくつかはDVDで見れるみたいですね。このメディア学部の卒業生はこういう映画の製作にも関わっているんでしょうか・・・。

以下エストニア映画で日本語字幕があるものををふたつ紹介しますね。

1944/独ソ・エストニア戦線

世界大戦では、エストニアはドイツとソ連の二陣営に、同じ民族でありながら引き裂かれて戦った歴史がありますが、その時代のエストニア兵士たちについての映画です。

こころに剣士を

こちらは第二次世界大戦後のソ連占領下のエストニアで、元フェンシング選手の学校の先生と生徒たちの交流を描くストーリーです。この先生はKGB(ソ連秘密警察)に追われているようです。

一度全部観てみたいのですが、エストニア国内で字幕付きのエストニア映画にどうしたらアクセスできるのかわからず、まだ観れていません・・・。

・スタートアップ支援に力を入れている

エストニアはスタートアップカルチャーで有名であり、昨年はワールドエコノミックフォーラムでヨーロッパのスタートアップホットスポット一位に選ばれています(こちら)。

それを反映するかのように、キャンパスには起業支援イベントの案内がそこかしこに・・・。

なお、このランキングでフランスは、イタリア、スペイン、ギリシャに続いてワースト5入りを果たしていますが、夫いわくフランスのキャンパスで、こういう掲示は見たことないなぁと言っていました。日本もスタートアップカルチャーが盛り上がっている印象はあまりないですし、私が学生の時も就職シーズンになると大企業が説明会をキャンパスで開く感じで、スタートアップという存在がこんな風に学内でアピールされることはありませんでしたね。

スタートアップ、フリーランス、企業、公務員、何が学生の進路としていいか悪いかというのはともかく、少なくともエストニアの大学では、ここまではっきりキャンパスでスタートアップ支援が打ち出されていたのはとても印象的でした。

日本とフランスはけっこう似ているところがあり、日本で有名大学から大企業や公務員がマジョリティが考える理想のコースであるように、フランスもいわゆるエリート養成校(グランゼコール)に行って大企業や公的機関で管理職になるというのが多くの学生が目指すところのようです。また、様々な分野に規制があり、税制が複雑でややこしく、法人税も高い、解雇規制が強いので人を雇うのが大変(フランスの場合これに加えて労働者がすぐデモをする)、法人をつくると公的機関でのいろいろな手続きが大変面倒くさい等、起業のハードルが比較的高い点も共通しています。

エストニアはこのあたりのバリアが薄いのに加えて、10代のうちから起業がキャリアの選択肢の一つとして明確に示されているのが、スタートアップカルチャーを盛り上げているんでしょうね。


このように、なかなかおもしろいなと思ったタリン大学キャンパスツアーでしたが、エストニア留学はまだまだマイナーなので、英語圏によくある留学エージェントはまだありません。

個人的には、別に留学にエージェントは必要ないと思いますが、最初の一歩的に何か知りたい、タリンに短期間来て様子を見てみたい等、ちょっとしたサポートが必要でしたら、ご連絡ください。

最後にタリン大学のプロモ「PLAN A」を貼っておきます!

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12件のコメント

  1. 初めまして。鹿嶋と申します。

    いま海外での留学を考えています。
    学校に通ってIT or Businessを学びたいのですがなかなか条件が合うところがなく困っています。
    問題は自分の学歴(高卒)、費用、言語です。
    ドイツ大学留学を考えていたのですが、入学自体がかなり困難で現実的ではありません。

    理想は費用が安く、英語での授業ができるところを探しています。
    エストニアの大学入学条件、または他のいい国ご存知でしたら教えてください。

    よろしくお願いします。

    1. こんにちは!高卒資格があれば、大学の学部への進学は問題ないと思いますよ。
      英語で留学できる国はこちらをご参照ください。
      https://www.topuniversities.com/student-info/studying-abroad/where-can-you-study-abroad-english

      エストニアの大学の入学条件・費用は、学部や大学によって異なるのでご希望の大学のホームページからお問い合わせください。
      要求される英語力はIELTS5~6が一般的ですが、大学によってはこれに満たない場合でも準備コースに通うことで入学が許可される可能性もあります(費用はその部分多くかかりますが)。入学が容易な大学は、進級が厳しいことが多い(卒業に至るまでの成績の審査が厳しい)ですので、留学生の留年率なども確認されるといいかもしれません。

  2. こんにちは! 初めまして。
    工藤と申します。
    私は現在大学3年生で大学休学して1年間エストニアに留学を考えています。
    学ぶ分野として経済、ビジネス、スタートアップ関連で考えていて、タリン工科大学のExchange studiesを考えているのですが、他の大学で1年間だけ留学するプログラムとか知ってましたら教えて頂きたいです。
    よろしくお願いします。

    1. こんにちは、コメントありがとうございます。
      エストニアは大学数が少ないので、ご希望にあうプログラムがあるのか大学に直接問い合わせていただくのが早いかと思います。
      経済・ビジネス・スタートアップ関連だと、タリン大学、タルトゥ大学、ユーロアカデミー、エストニア応用科学大学、エストニアビジネススクールあたりかと思います。

      1. コメントありがとうございます!
        大学毎に調べて連絡とってみます!
        ご親切に教えて頂きありがとうございました!

  3. こんにちは!ブログを拝見しました。
    海外留学先を考えていた私にとって、エストニアはベストな環境だと感じました。
    読みやすくて、分かりやすい記事をありがとうございました!
    出願してみます!!

    1. エストニアは治安も比較的よく、生活費も安く、留学になかなか良い国だと思います。
      私がもうちょっと若かったら、進学先として本気で検討してました。
      まだどこの国で勉強するかわからないと思いますが、学生生活楽しんでくださいね!

  4. コメント失礼します!
    私は今アイエルツを取得して
    エストニア留学を考えていますが、エージェントなどが見つからないのですが、自分でやるのは難しいでしょうか?

    1. 自分で手続きするので問題ないと思います。
      複数の大学に出願する際はエージェントを利用すると、一括で書類を管理してくれたりして便利なのですが、エストニアはそこまで大学の種類もないですしね。
      私も留学経験者ですが、留学エージェントの持っている情報も古かったり、詳しくなかったりということが多かったので、直接大学にコンタクトをとるのが確実です。

  5. こんにちは!
    英語を使用して1年間の留学を考えているものです。
    今は日本の外国語大学で英語を勉強しているのですが、こちらの記事を見てエストニアを候補として考えています。
    エストニアはスタートアッププログラムとか起業に力を入れているのでそういった類のものを学びたいと考えていますが、タリン大学とエストニアビジネススクールが良さそうだったのですが、筆者さんからみてどちらがおすすめでしょうか?

    1. 起業やスタートアップの場合、いずれ自分でスタートアップを立ち上げることを考えているのであれば、大学で科目として学ぶよりは、実際にエストニアで自分で会社を作ってみるのが一番効率的なのではと個人的には思います。学生向けスタートアップイベントもたくさんありますし。そういう意味では、その二校よりもタリン工科大がおすすめです。

      1. お返事ありがとうございます。
        タリン工科大学は、IT系の大学みたいですが、そういった類のものに一切触れたことがない日本人でも平気でしょうか?
        授業や周りの人の話についていけるかという意味で。
        また、そっち関連の専門用語も覚えてなきゃ厳しいですか?

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